鯖缶NFL三昧

NFL(アメフト)ファンの個人ブログです。

【コラム】「オーディションもの」が好きなんだ(NFLドラフトに寄せて)

(スポンサーリンク)

僕が今までに一番多く繰り返し見た映画は、「コーラスライン」だと思う。


小学3年の頃だったと思う。我が家にはじめてVHSのビデオデッキが導入された。サブスクも、DVDもなく、レンタルビデオ店もほとんどなかった時代の話である。


家庭にビデオデッキがあることに、子どもの頃の僕は興奮した。母も僕も大好きだった「ものまね王座決定戦」を録画したら、コロッケや清水アキラの芸を何度も見られるじゃないか。テレビでやる映画を録画したら、いつでも好きな時に見られるじゃないか。


それで、ファミリーで見られる名作系の映画を、僕らは片っ端から録画していった。そのうち、「CMカット」という技を僕は身につけた。わかるだろうか、「CMカット」。この技は、映画の途中でCMが流れる度に、デッキの録画を停止することによって、テープに記録された映画に、CMが残らないようにする技だ。


ずっとリモコンを手にして準備して、CM前に画面が黒くなるタイミングで一時停止を押す。これが案外難しい。映画が続いているのに録画を止めてしまったら元も子もないから、ついつい判断が慎重になってしまう。でも、CMの音やセリフが始まってから停止して、残ったビデオに1秒ぐらいの余計なカットが挟まってしまうのも悔しい。


それで、僕がはじめて「最初から最後までの完璧なCMカット」に成功した映画が「コーラスライン」だったのだ。そのことに気をよくした小学生の僕は、このミュージカル映画を、繰り返し見ることになる。

 

コーラスライン [DVD]

コーラスライン [DVD]

  • 発売日: 2012/04/13
  • メディア: DVD
 

(↑Amazonのリンクです) 


ブロードウェーのミュージカルへの出演を目指すダンサーの卵たちのオーディションを描く。最初は300人いた応募者がどんどんとふるいにかけられていくその過程が、まるでヒヨコのオスメスを鑑定するみたいにドライで残酷で。僕を夢中にさせた。


選考が進んで、応募者の人数が絞れれてからようやく、ダンサーたちは自己PRできる。舞台に懸ける思いや来歴を、歌とダンスで見せる(なにしろミュージカルだから)シーンが見所だと思うんだけど、物語の序盤でガンガン応募者が落とされていく過程も好きだった。「こんなにたくさんダンサーがいるのに、こんなにちょっとしか残らないの? ヤバくない?」みたいな感覚。

 

さて、「オーディションもの」で何がグッとくるか、というと「数少ないイスを奪い合う競争相手」こそが、「夢に懸ける自らの思いの最大の理解者」である、という構図だ。僕はこの構図にめちゃくちゃ弱い。ほとんど自動的に萌えてしまう。


「麻雀放浪記」の坊や哲とドサ健(や他のライバル)の関係もそうだ。彼らはギャンブラーだから、お互いに奪い合うことでしか関われない。生存戦略の都合で手を組むことはあっても、それは一時的なことで、本当の友達にはなれない。その孤独を、最も理解してるのはライバルなのだ。


将棋界を見る時にもそれに似た興奮がある。「一番の友と殺し合う」という「日常」を、安全な外側から観察するような野蛮な好奇心。サバイバルの繰り返しだから、その間に伝え聞く「奨励会時代の友情物語」には、それが甘くても苦くても、涙腺をダイレクトに刺激される。


さて、なんでそんなことを思い出したかというと、今年もNFLドラフトが近づいてきたからだ。


思えばNFLも、「オーディションもの」としての面白さが常にある。チームに貢献したシンボルのようなスター選手も、チームに残れるとは限らない厳しい生存競争の世界。(ロースター53人枠という人数が絶妙すぎる。スターターが攻守で22人、控えを1人ずつ用意したらその時点でもう44人だ。スペシャリストの枠も考えればかなりギリギリな人数制限。1人たりとも「お情け」で置いておく余裕はない)


キャンプで苦楽を分かち合うチームメートが、開幕前のロースター争いでは最大のライバルなのだ。ベテランも若手もそれぞれ苦しい。スター選手だって、年棒に見合った実力がなければ、「お荷物」になってしまう。毎年がサバイバルの積み重ね。毎週の試合が、毎日の練習がオーディション。


その非情さがあるからこそ、「ドラフト外からのシンデレラストーリー」に胸躍るし、「引退前にかつてのチームで1日契約」の浪花節が胸に沁みるんじゃないか。この、グループアイドルを追いかけて、その中で人気順位にハラハラするのにも似た、「オーディションものっぽさ」がNFLの魅力の1つなんじゃないか。


さて、NFLドラフトは、そんな「オーディションものっぽさ」の楽しみの頂点なんじゃないか。ドラフト候補生たちに、「カレッジ終了時点」での順位をつけるクライマックスであり、NFLでの最終審査が始まるそのシリーズの1回目でもある。


1巡目で選手される選手たちは、みんな「才能と努力の最高傑作」みたいな若者たちだろう。彼らがどんな表情で指名の栄誉に応えるのか。楽しくないはずがない。ええ、有給取るだけの価値があるんじゃないですかね。雰囲気を味わうだけでも十分に酔える。ねえ、そうでしょう。

 

 

 

 

(ツイッター、フォローお願いします↓)