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【感想】「アイシールド21」を10年ぶりに読んでみて惚れ直した件

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言わずと知れた名作アメフトマンガ「アイシールド21」(原作:板垣理一郎/作画:村田雄介)を久しぶりに読み直しました。はじめて読んだ時はアメフトのことを何も知りませんでしたが、NFLにハマってから読み直してみて、どう思ったのか、感想をまとめてみました。


(もくじ)

 

 

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①チームがまとまっていく過程がアツい

読み直してまず再認識したのは、「個性豊かな登場人物たちが、チームとしてまとまっていく」という過程の、王道の面白さでした。


気が弱くてパシリばかさせられていたセナ、キャッチしかできなくてレギュラーになれなかった野球部の落ちこぼれのモン太、勉強ばかりでスポーツに挑戦する勇気のなかった雪光、負けず嫌いのくせに根性は半端な不良だったハァハァ3兄弟。読者が感情移入できる、魅力たっぷりの「はみ出し者」の彼らが、アメフトに出会ってどんどんカッコよくなっていく展開に引き込まれました。


モン太が登場してから、面白さが一気に加速した気がしました。「取柄が1つしかなくても、輝ける場所がある」という物語の背骨が、ヤル気を表に出せる屈託ないキャラのおかげで、くっきりと分かりやすくなった気がします。この作品の、「影のMVP」かもしれません。


太陽スフィンクス戦で、セナが相手の最強ラインマン番場と1対1になる場面が象徴的でした。アウト・オブ・バウンズ外に逃げることもできたところで、勇気を出してインに切れ込んだセナ。あえなく止められるも、蛭魔から「外に逃げるより1ヤード稼いだな」と認められます。セナが「アメフト楽しい」と、自分の気持ちに気づくシーンです。


気が弱くて、生真面目な性格のセナが、「強敵と出会って、強敵をリスペクトすることで、自分の中の闘志に気づいていく」という主題がバチっと決まってグッときました。「振り絞った勇気の結果がわずか1ヤードのゲイン。でもその1ヤードがデカいんだよ」と、少年マンガらしい興奮が描かれています。


ハァハァ3兄弟がアメフトにハマる過程も見事でした。太陽戦で散々煽られて、散々ライン戦で負けて、やっと1回やり返した後で。どうやったら勝ったことになるかを考えます。1回相手に“青天”を食らわせたらそれで勝ちなのか。違うでしょう。10回ならいいのか、と言い合ううちに、「試合に勝ったら勝ちだろ」が結論になります。「ナメられたくない」という感情が「試合に勝ちたい」に着地していく流れで、説得力があります。


続くNASAエイリアンズ戦では、3兄弟のシリアス担当十文字が、自分たちの実力不足を認めた上で、それでも勝ちたいと「なんとか一瞬でもブロックするから抜いてくれ」とセナに心情を吐露。チーム最大の武器を生かすために、他の選手はブロックで貢献する。実力は劣勢でも、そこに勝つチャンスがうまれるし、なんとかするしかない。試合の描写の中で、「個人技+チームプレー」という、アメフトへの理解が立体的になった場面です。セナの活躍に一層気持ちを乗せられるじゃないですか。


そして、「アイシールド21」の面白さのピークは、何といっても神龍寺ナーガ戦でしょう。読み直してもやっぱり面白かった。阿含の敵キャラとしての造形が神すぎるじゃないですか。


「努力しても雑魚は雑魚だろ」って、凡才たちの「諦めない心」をつぶしにくる、天才プレーヤー、阿含が泥門デビルバッツに立ちはだかります。「アメフトを好きになった。デスマーチも乗り越えた。でも、天才を相手にしても、わずかな勝算を本当に信じられるか」というドラマ。


そのドラマが鮮やかに描かれたのが後半開始でした。「もう諦めろ」という蛭魔のセリフを“芝居”だと見抜き、「諦めるわけがない」とメンバー全員が信じたからこそのオンサイドキックと、その成功。「みんなが気持ちを1つにしないと勝てない」というのはどのスポーツでも同じでしょうけど、それが可視化されるのがアメフトの魅力。そのことがストレートに伝わる名場面でした。


その直後に、「メンバーの中でも、最もあきらめの悪い凡才」である雪光が、ついにフィールドに立ち、反撃に重要な役割を果たす流れは、もう惚れ直すしかありませんでした。


②「アイシールド21=正体不明のヒーロー」という設定はあんまり生かせてないかも?

読み直してみて、「アイシールド21」という設定は、そんなに面白くなかったかもなと、個人的には思いました。


一応「他の部活からの勧誘を避けるため」と、「まもりを心配させるとマズい」っていう理由はあります。「気弱で貧弱なパシリ少年としての小早川瀬那」と「強力助っ人で、正体不明のヒーローとしてのアイシールド21」のギャップの面白さや、正体を隠すためのドタバタという要素もあるでしょう。でも、どちらかと言うと「おまけ要素」に近く思えます。


というのも、まもり以外の多くの主要キャラは「アイシールド21はセナ」と早い段階で気づきますし、セナ自身アメフトに魅せられ、実力は未完成でも選手としての自覚も芽生えるので、「他の部活からの正体を隠す」必然性もあまりない気がします。


播戸スパイダーズ戦前に、まもりに正体を明かすシーンは、もちろん名場面の1つではありますが、「何かミッションをクリアして、成長した証として仮面を脱ぐ」ということでもなく、「ストーリーの段取りとして終わらせておく」みたいな拍子抜けな印象がありました。


ですが一方で、僕はこれが作品のキズになってるとはあまり思いませんでした。「成長してから次に進む」ではなく「強敵と出会って、成長するしかなくなる」のがセナのドラマなので、「とりあえずのハッタリだった“アイシールド21”という称号に、ふさわしい選手になる後付けで頑張るしかない」というストーリーがすんなりと入ってくるからです。


セナがもっとウジウジしてた方が「アイシールド21」という仮面をつける設定に意味が出るはずですが、物語が進むにつれ、「その設定は特に要らなくなった」ということかな、と個人的には理解しています。

 

③用語やルールの説明がなくてもアメフトを理解できるのがスゴい

読み返してみて、ルールや戦術の解説がそれほど入ってないことに驚きました。僕は「アイシールド21」を読んだ直後にNFLにハマったわけではありませんが、NFLを見始めた頃には、「細かいことは分からないけど、抑えるべきポイントは「アイシールド21」で履修済み」と感じていた記憶がありました。


ですが、実際に読み直してみると、ルールや用語の説明はあくまでも最小限。ストーリーの中に、アメフトの駆け引きの面白さが入っているからでしょう。

 

「ランを生かすにはパスが必要」「パスを生かすにはランが必要」「選択肢が1つでは、相手が迷わずにハッタリが効かない」「フェイクにはチーム全員の意思疎通が必要」というアメフトの醍醐味が、キャラたちの活躍を追うだけで自然に理解できるのがスゴいです。


また、アメフト用語の訳語のチョイスがなかなか神がかってることにも気づきました。「電撃突撃」と書いてルビが「ブリッツ」なのはなんとか思いつきそうですが、「オプションルート」を「速選ルート」としたり、「連続攻撃権獲得」でルビが「ファーストダウン」としたりするのは、英和辞典やアメフト用語集を見ただけでは出てこないオリジナルの発想ではないでしょうか。


確かに、その用語の本質的な部分だけ伝われば、セナたちの挑戦を見守るには十分なはずですよね。こういった大胆な、ワードチョイスの“絶妙な飛躍”も一役買っているのかな、と思いました。


④終わりに

読み直して気づいたことをまとめてみました。アメフトファンの観点から言えば、「アメフトの魅力を語ること」が「目的」でも「手段」でもなく、主人公たちのキャラの魅力や物語の躍動感と一体化してるように感じられて、改めて楽しめました。


はじめての方もそうですが、「もう一度読んでみようかな」と思うきっかけになればうれしいです。

 

 

 

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