10月25日(火) 呆然の密度が濃くなったよ
さて、マンデーナイトのベアーズ対ペイトリオッツ戦。この1戦の間に起きた僕の感情の揺れを、僕はちゃんと書けるのか自信がないな。でも、書くしかないか。他に書くことないもんな。
もやがかかったようなフィールド。神秘的なのか、“悪い予感”の具現化的演出なのか、スッキリとしない画面。試合開始のキックオフを、ペイトリオッツのマーカス・ジョーンズがリターンするんだけど、17ヤードで止められる。僕は、このリターンが好きじゃなかったな。キッパリとタッチバックで、25ヤード地点からの攻撃をマック・ジョーンズに預けた方が潔くないか。
マック・ジョーンズの登場。休んだのは3試合だった。スタジアムの雰囲気はソワソワと落ち着かない感じ。分かる。僕だって落ち着かない。1stダウン。スティーヴンソンにハンドオフするもノーゲイン。2ndダウン。プレーアクションから左サイドのソーントンへ。やや上ずったパスで、キャッチするもオウト・オブ・バウンズ。フラッグが出ている。オフサイドとホールディングで相殺。パス失敗が無効になって得をしたのか。相手のオフサイドが出てたのにホールディングで損をしたのか。ソワソワが治まらない。やり直しの2ndダウン。右に投げるフェイクを入れてから、左のスティーヴンソンにスクリーンパスで持たせたけど、待ち構えてたベアーズディフェンスにすぐ止められる。3rd&11。ショットガンだ。マックは一度下がるも、すぐにポケットから出て中央を走って6ヤードのみのゲイン。あっという間のスリー&アウト。
マックの足首の状態はどうなのか。よく分からないけど大丈夫っぽい。クオーターバックとしての判断力はどうだったのか。ソーントンへのパスは不正確なコントロールだったけど、タイミングはよかった気がする。3rdダウンでポケットから出たプレーはどうか。相手のパスラッシュは見えてた気がするけど、ひょっとしたらポケットを3ステップぐらい前に出たところで、パスターゲットを見るチャンスはなかったか。それともやむなしだったのか。マックの状態を最初の数プレーで目利きすることなど僕にできるわけないので、端的に言うと「頼むからさっさと安心させてくれ」みたいな心理状態。
ベアーズの最初のポゼッションの間も、「一刻も早くマックにボールを持たせて、僕を安心させるようなドライブを見せてほしい」というだけのもどかしい時間で(ミーハー初心者ファンはそんなものである)。フィールドゴールに抑えて3点ビハインドでペイトリオッツ2回目のポゼッション。
マーカス・ジョーンズのリターンが今度は21ヤード。無意味に4ヤード損した、とテンションが下がる。もちろん、ビッグリターンの可能性だってあるわけだから無意味じゃないのは分かってるんだけど、ちょっとゲンが悪い。ケチのついてないプレーンな状況をマックに用意してやれよ、と思う。さっきの繰り返し。いい予感がしない。
1stダウン。ハリスにハンドオフして3ヤードゲイン。2nd&7。プレーアクション。ポケットが真ん中から壊れる。マックはパスラッシュを一度はかわしたけど、すぐに逃げ場を失ってスライディング。ここで、ペナルティの相殺があって、また腑に落ちないような気分にさせられる。やり直しの2nd&7はプレーアクション。今度はプロテクションは問題なし。でも出しどころがなくハリスにチェックダウン。3rd&5。フォルススタートで3rd&10まで後退。しっかりしてくれ。オフェンスのペナルティは不利に直結するんだ。3rd&10はスティーヴンソンに持たせて5ヤードのゲインに留まる。
なんだこれは。最初のポゼッションとまったく同じような流れでスリー&アウトか。スタジアムのファンが不満そう。3rd&10なのにランのコールが気に入らなかったか。ひょっとしたら僕と同じように、「なんでもいいからさっさと俺を安心させてくれよ」みたいな短絡的な気持ちだったんじゃないか。そのイライラはよくないよ。考えが極端になりがち。一瞬ですべてを解決するようなことなんて起きないのに、それを望んで冷静さを失うのは得策じゃない。でも、分かる。もどかしさはマックスだ。
ため息をなんとか堪えながらパントを見る。飛距離も滞空時間もイマイチ。そういえば、最初のパントもイマイチじゃなかったか? 我慢していたため息が出てしまう。僕の弱気がバレてベアーズが勇気づけてしまったらどうする? 「余裕で勝てる」とドシっと構えて、相手を焦らせなくちゃダメじゃないか。東京でPC画面をにらんでるだけの自分のため息が、試合に影響することを心配するなんて、我ながらどういう精神状態なんだか。呆れるしかない。でも、ジレットスタジアムのオーディエンスの反応は、試合に影響するでしょ。彼らのどよめき、ため息、ブーイングと、自分が同期しないように心をミュートして。
でも試合は続く。ソワソワした心が、落ち着かないままにベアーズにタッチダウンを許す。おい、あっという間に10点ビハインドじゃないか。人生かよ。ぼーっとしてたら、置いて行かれるんだ。実力が足りないのに、厳しい状況になる。覚悟が足りてないから、焦って取り返そうとしてミスを重ねるみたいなパターンか。違うよな、マック。何かを見せてくれ。
3度目のポゼッションも、あっという間に3rd&5。ここで、ノーバック。そうだ。パスだよ。マックがパスを決めないとどのみち勝負にならない。スナップされる。相手ラッシュは4人。マックがポケットを飛び出して中央を駆け上がる。迷いはなさそう。スライディングのタイミングもいい。10ヤードゲイン。やっとファーストダウン更新だ。あまり時間を使わず次のスナップ。スティーヴンソンに持たせて4ヤードゲイン。2nd&6。ここでナイススローが出る。プロテクションもOK、タイミングもコントロールもスピードもピントの合った美しいパスがヘンリーに通った。ここで第1クオーター終了。
うーん、なんとも間が悪いインターミッション。やっとまともなパスが通って、ようやくつかみかけたグルーヴに1回水を差されるのか。僕も落ち着きを失って、トイレに行くタイミングを逃したりして。早く、続きを、見せてくれ。一刻も早く、俺をもどかしさから解放してくれ。
第2クオーター。敵陣46ヤードでの1st&10。なんともスタジアムが騒がしい。もっと落ち着いた雰囲気でやらせてあげられないのか(なんだ俺は。母親かよ)。2nd&9。マックがポケットから出てスルスルと進む。スライディングしてファーストダウン更新に届かず。3rd&1。次のスナップが始まらない。ベアーズの選手が痛んでる。マックがスライディングする時に足が股間に当たったか。試合が再開してすぐにスティーヴンソンが1ヤードを更新。敵陣36ヤード地点での1st&10。まだフォークのフィールドゴールレンジには入ってないだろう。
いや、リプレーで見ると届いてなくないか? メジャーでは届いているけど、その前にボールを置く位置が甘いように見える。心がザワザワする。チャレンジしないでくれ(チャレンジされても判定が覆ることはなかったかもしれないけど)。甘い判定だろうとなんだろうと、喉から手が出るほどほしいファーストダウンなんだ。
1st&10。プレーアクション。パスプロは一応OK。ターゲットをゆっくり探す時間はないけど、プレッシャーがかかる前にスローイングできるぐらい。アンダーニースのハリスへの投げたけどドロップ。おいおい、ハリス、後輩を助けてやれ。フィールドゴール圏内に入っての2nd&3なら、どんなコールもできたじゃないか。
そして、2nd&10。ポケットが真ん中で割れる。マックは右に逃げて、山なりのパスを投げる。ジョヌ・スミスに向かっていたボールは、まるで最初からそうなることが決まっていたかのように、きれいにインターセプトされた。ブーイング混じりにどよめくスタジアム。ザッピコールも少し聞こえる。僕の気持ちも、スタジアムと同じように混じり合ってる。ため息と、ブーイングと、なんでもいいから解決策はないのかと叫ぶ気持ちと。
半ば感情が麻痺しながら、助けてくれ、と祈るような気持ちで画面を見つめる。ここで、ディフェンス陣が奮起。1stダウンから3rdダウンまでキッチリと仕留めて、フィールズに何もさせずにパントに追い込んだ。リターンもしっかり稼いで自陣45ヤードでのボール保持権。まだいけるでしょ。
そして、次の攻撃でフィールドに出たのはマックじゃなくてザッピだった。まさか。何かの間違いだろ。マジかよ。ここで、僕の感情は試合の展開を追うのを放棄してしまう。何が起きていて、それをどう思ったらいいか自分で決める前に、状況が次に進む感じ。試合を見ているんだけど、気持ちが情報についていけない。
クオーターバックの交代について、「ベリチックの非情な采配すげえ。せめてハーフタイムまで待てばいいのに、決断が早い。かっこいい」みたいなことをまずは思ったのね。そう思ってる間に、ザッピはパスラッシュをよく見切ってスティーヴンソンへのパスを決めたので、その思いは補強されて。でもちょっとしてから、「だったら最初からザッピ出さないとおかしくないか?」と思い始めた。ベリチックが何を考えてるのか分からないのは毎度のこととして、僕は自分の考えてることも疑わしく思えてきて混乱したんだ。
恋人に殴られても、それを「愛があるからこその暴力」「本当はいい人」とか思い込もうとする病んだ精神に似てるのでは。本当は、ベリチックの采配がよくなかったことを分かってるのに、それを認めたくなくて、無理やり肯定的な見方をして自分を操作してないか?
だって、3回のドライブだけでマックを交代させるなんてひどいじゃないか。確かにインターセプトは投げた。でも、窮屈なフィールドポジションを与え、オフェンスラインのペナルティも3回あったんだぜ。それでリズムを作るなんて、誰だって無理だよ。「非情だけど冷静な采配」なんじゃなくて、ベリチックまでがパニックに陥ってるんじゃないか。
「いやいや、マックの足首の状態を考慮して、途中交代は予定の行動なのかも。スリー&アウト2本とインターセプトのみじめな結果と、ザッピの交代後のタッチダウンが偶然重なったから劇的に見えるだけであって、最高の采配でも最低の采配でもなく、やれることをやってるだけなのかも」という理屈で落ち着こうとしてみたり。少なくとも僕は混乱しっぱなしだ。
その間に試合は逆転する。「非情だけど最高の采配」とやっぱり思いたい。そう思えば楽になれる。でも… と思っているうちに前半が終わった。そこから先の試合内容はあんまり覚えてない。終わってみれば完敗で、「タラレバ」以前の問題だったような気もする。
試合を見る前から、呆然とした精神状態だった。「何かいいことが起きるんじゃないか」と根拠なく思ってたけど、試合が終わって「どうせ何もいいことなんて起きない」と、呆然が濃くなってしまった。
先週までは、NFLの過剰摂取で頭が混乱すると添削の仕事を午後からやっていたけど、今日はそれもする気にならない。どうするか。スプラトゥーンでしょ。バイト(対人チームバトルではなくて、4人プレーヤーが組んでミッションクリアを狙うやつ)をするんだ。子どもたちが下校してくるまで、3時間やり続けたよ。これは、ヤバいと思ったな。自分の生活を充実させないと、NFLに心が動かされすぎてしまって不健康でしょ。
まあでも、今日はしょうがない。でも、このままでは危ないかもしれない。自分の中に筋の通った目標のようなものがないと、なかなかサバイバルが難しいんじゃないか。不安定な精神状態を、安易な快感に吸い取られてしまう。ゲームならまだいいけど、アルコールやギャンブルにハマってしまう自分が容易に想像できる。これは危険だ。
さあ、どうする。「筋の通った目標のようなもの」がないまま今の自分に行き着いてしまって、その挙句でのNFL中毒だからな。今さら「目標を持った、きっぱりとした精神状態が欲しい」なんて虫のいい話なのかもしれない。
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