NFLの記事でよく見かけるスタッツ/アナリティクス用語、「EPA」について短く説明します。
【意味】
EPAは、Expected Points Addedの頭文字。「得点期待値への寄与度」のこと。
Expected Pointsは、「どの程度の確率で得点できるかの値」のこと。過去のデータからダウン数(1st/2nd/3rd/4th)、ファーストダウン更新までの必要ヤード数、フィールドの地点(ゴールラインまでの距離)、残り時間などによって決める。
Expected Points Addedは、あるプレーの開始時点と終了時点で、Expected Pointsがどの程度変化したか(得点への期待値が上がったか、下がったか)を示す。例えば、自陣20ヤード地点での1st&10でのEPは0.7。そこで20ヤードのパスが成功した場合、40ヤード地点でのEPは2.06。この20ヤードパスによって変化した+1.36がEPAとなる。
【補足】
・「RBが2ヤードゲインした」プレーでも、1st&10からの2ヤードゲイン(守備が有利になる)と、3rd&10からの2ヤードゲイン(攻撃終了の可能性が非常に高くなる)と、3rd&1からの2ヤードゲイン(攻撃側のプレー成功)では「2ヤード」の価値がまったく違います。それを距離ではなく「得点できる可能性にどの程度貢献したか」で評価する狙いがあります。
・QBを評価する時にはパスプレーのスタッツを重視しがちですが、EPAを指標として使えば、ランとパスの双方を考慮に入れられます。同様に、ペナルティやターンオーバーによる効果も同じ物差しで評価できるメリットがあります。
【英語での説明と訳】
・A turnover on first-and-10 at midfield that is taken back to your own 20 is worth minus-5.5 EPA; a Hail Mary interception at the end of the half from midfield is not nearly as penalizing. EPA knows that all turnovers aren't created equal, as well.
・A 60-yard pass play down to the 1-yard line on third-and-10 is worth 5.7 EPA because it puts you right on the doorstep of scoring. The subsequent 1-yard rushing TD on first-and-goal is worth much less, even though that's the play that actually gets you the six points.
引用元:
NFL - Explaining the expected points metric
・ミッドフィールドでの1st&10でターンオーバーを喫し自陣20ヤードで相手ポゼッションになった場合のEPAは-5.5。それに対し、前半終了間際にミッドフィールドから投げたエイルメリーがインターセプトされた場合はほとんどマイナスなし。EPAで評価することで、すべてのターンオーバーは違う意味を持ってることが明らかになる。
・3rd&10で60ヤードのパスを成功させゴールライン前の敵陣1ヤードまで進んだ場合、得点寸前まで状況を変えたプレーとしてEPAは+5.7となる。その次に1st&goalで1ヤードのラッシングTDが起きたとする。確かにそのプレーで実際に6点を得たが、価値としては前者のプレーが高い。
【参考】
2019シーズンのQBランキングを例としてチェックします。EPAでトップはやはりMVPとなったラマー・ジャクソンでした。ラマー・ジャクソンはQBレーティングでは3位、ANY/Aでは4位であり、パスのみを指標にしたスタッツでは評価しにくかったことが分かるかもしれません。
2019 NFL Season Leaders Total QBR | ESPN
2019 NFL Passing | Pro-Football-Reference.com
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