鯖缶NFL三昧

NFL(アメフト)の英文ニュースの一部を訳して紹介します

ビル・ベリチックに学ぶ、本音を隠すテクニック

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ペイトリオッツのヘッドコーチ、ビル・ベリチック。当代随一の名将と知られます。毎年のようにスーパーボウル争いに加わってくるチームを作る手腕は、見事というよりありません。完全ウェーバー制のドラフト、「ハードキャップ」と呼ばれる厳正なサラリーキャップ制を用いているNFLのシステムを考えれば、なおのことです。

 

彼の注目ポイントの1つとして、「試合中のポーカーフェイス」があります。ほとんどの場面で感情を表に出さないスタイルを貫いていて、対戦相手のコーチは「手の内がすべて読まれてるのでは?」と疑心暗鬼に陥って判断ミスをすることもしばしばある気がします。

 

そんなベリチックの魅力が、存分に味わえるのが記者会見。記者たちの質問を前に、仏頂面で当たり前のことしか答えず、本音を見せません(それが個人的に面白くて、このブログではペイトリオッツ戦の予習がわりに、試合3日前ぐらいの記者会見のトランスクリプトを度々紹介しています)。

 

この記事では、ベリチックがどのような受け答えで本音を隠しているか、そのテクニックをまとめてみました。

 

 

 

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対戦相手をほめ殺し

Q: Given their loss last week in Indianapolis, do you have to remind your players that this team is capable of big wins, citing their big victory they had on the road in Minnesota earlier this season?

BB: Yeah, they've won a couple of big games. It's a division game. It's always tough with them up there. We know that. I mean, we know it's going to be tough. We talked about it, but talking about it is the easy part. It'll be dealing with it Monday night that will be the hard part.

引用元: Transcript: Bill Belichick Press Conference 12/24

 

Q:(ビルズは)先週インディアナポリスで負けたことを考えると、選手たちには彼らには大勝できる力があると思い出させる必要がありますね? シーズン序盤には、バイキングスを相手にアウェーで完勝しています。

ビル・ベリチック:ああ。今季彼らは2つ大きな勝利を得ている。それに、我々とは同地区のゲームだ。アウェーでビルズと戦うのは、いつでも厳しいと分かっている。厳しい試合になるだろう。我々はそう話している。だが、話すのは簡単だ。だが、このマンデーナイトゲームで、実際に戦うのは簡単なことではない。

ポイント:week8のビルズ戦を前にしてのコメントです。「ほめ殺し」というほどのことではないように感じるかもしれませんが、この試合の前まで、ブレイディはビルズに対して28勝3敗。ビルズのホームに乗り込んでの成績は14勝2敗でした。それまでの15年以上もの間、ほとんど負けていない相手に「 It's always tough with them up there. (彼らのホームで彼らと対戦するのはいつもタフ)」と話すのは、「嫌味」を通り越して「不条理ギャグ」とすら思えます。

(参考:NFL - 28-3 numbers behind Tom Brady, New England Patriots dominance against Buffalo Bills

 

 

同じことを2回言う

Q: Do you feel like you're playing for the top seed in the AFC this week?

BB: I feel like we're playing Kansas City.

Q: Does it seem like the stakes are higher for this game?

BB: It feels like we're playing Kansas City.

引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 10/10


Q:今週の対戦でAFCのトップシードを懸けて戦うように思われますか?

ビル・ベリチック:チーフスと戦うように思う。

Q:他の週よりも重要な戦いでは?

ビル・ベリチック:チーフスと戦うように思う。

 

ポイント:2018年week6チーフス戦を控えた状況でのインタビューより。それまで5連勝だったチーフスと、3勝2敗のペイトリオッツの対戦でした。「レギュラーシーズン終了時には、プレーオフのシード順位がこのゲームの勝敗次第で変わることになるかもしれない」という状況を踏まえての質問です。9月に苦戦したペイトリオッツがAFC1位シードを狙えるようなチーム状態にあるのか、チーフスをそのライバルと見なすのか、考えを聞きたいところでしたが、ベリチックは当たり前のことしか答えません。さらに、同じ答えを2回繰り返して、質問に答えるつもりはないことを示します。

 

 

 

極小化して、話をすり替える

Q: Can you count on Rob Gronkowski being out there every week?

BB: I don't think he was on the injury report last week.

引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 12/5

 

Q:ロブ・ブロンカウスキーは毎週の試合出場を計算できる状態でしょうか?

ビル・ベリチック:先週のインジュリーリポートに彼の名はなかったはずだ。

 

ポイント:TEグロンカウスキーの状態は、ファンはもちろんのこと、対戦相手も気になるはず。もちろんベリチックが答えるはずもありません。上の受け答えは、2018年week14のドルフィンズ戦の前のもの。このシーズン4試合に欠場していたグロンカウスキーの状態と今後の見込みいついてが質問意図であることは明らかですが、「先週のリポートには載っていない」との回答。確かに、week13の試合前々日のリポートには載っていないので、嘘はついていません。このインタビュー当日のインジュリー・リポートにはグロンカウスキーの名前が「limited」で載っている状況での回答だと考えると、一層味わい深いです。

 

できる限り、回りくどく答える

Q: Can you speak to the level of commitment that Rex Burkhead has shown since he went down with an injury earlier this year to be able to get to a position where he is able to get back to the 53-man roster?

BB: Yeah, Rex has worked really hard, as he always does. So, we talked about it when I made the move and I talked to him about it. We had a lengthy discussion. I think we both had an understanding of what the situation was, what needed to be done and how to do it. He’s been very diligent and consistent with his approach to it, and I’d say as we got closer to the opportunity to bring him back to being eligible to practice and then ultimately being eligible to play, he consistently met or exceeded kind of targets or things that he needed to show or do or be able to do to move forward. So, yeah, he’s done a great job and look forward to having him back.

 引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 11/28

 

Q:今季序盤のケガで離脱してから、再び53人のロースターに戻れる状態になるまで、RBレックス・バークヘッドには相当の努力があったと思います。それについてコメントをお願いします。

ビル・ベリチック:ああ。レックスはそれまでと同様に、必死に努力した。彼の復帰については、私が決断をしてそれを彼に話してから、公に話すこととしよう。彼とはすでに長く話し合っている。今の状況や必要なこと、それをどのようにクリアするかを、お互い理解している。彼は入念なリハビリを、粘り強く続けてきた。実際に練習に加わり、最終的には試合でプレーできるように近づいていると言える。彼はなすべきことをしっかりやって、または目標を上回っている。我々にそのことを見せて、前進している。よくやっているし、復帰が楽しみだ。

 

ポイント:上のコメントは、2018年week13バイキングス戦の前のものです。week3で負傷してIR入りをしていたRBバークヘッドをロースターに戻した次の日。実際にゲームで出場させるかなどについては明言を避けました。上のベリチックの答えは、要するに「よく頑張って回復した。それ以上のことは話さない」と一言で済むはずのもの。それをできる限り引き伸ばして答える。もう記者たちには同じ質問はできません。

 

各論を語らず、総論で答える 

Q: Is it kind of like pick your poison in the passing game between Stefon Diggs and Adam Thielen and the rest of the guys?

BB: They’re all good, yeah. They’re all good. So, yeah, every one of them. [Aldrick] Robinson, [Laquon] Treadwell, Thielen, Diggs, [Kyle] Rudolph, the backs, quarterback – take your pick. They’re all good.

引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 11/28

 

Q:バイキングスのパスゲームでは、アダム・シーレンとステフォン・ディグス、またその他の選手を同時に抑えるのは難しそうに思えますが?

ビル・ベリチック:ああ、いい選手ばかりだ。オルドリック・ロビンソン、ラクォン・トレッドウェル、シーレン、ディグス、カイル・ルドルフ。RB陣もQBもいい。誰を見てもいい選手だ。

 

ポイント:これも、バイキングス戦の前の記者会見より。スターWRであるシーレンとディグスについて 「pick your poison(=毒を選べ)」、どちらかを守ろうとしても結局は(毒を選ぶようなもので)やられてしまうというWRコンビへのコメントを求められても、「全員素晴らしい」と返し、ベリチックが2人をどのように防ぐつもりなのかについて、ヒントを与えていません。 

 

単なる事実を話す

Q: With the running backs, is Jaylen Samuels used a little bit differently or has he been able to carry the same responsibilities as Conner has this year?

BB: He’s in there on every down. Yep, he’s been an every-down player for them.

 引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 12/12

 

Q:ランニングバックとしては、ジェイレン・サミュエルズは今までとは少し違う使われ方になりそうでしょうか、それとも(ジェームズ・)コナーが果たしてきた役割を担うことになりそうでしょうか?

ビル・ベリチック:彼は、すべてのダウンで起用される選手だ。ああ、彼はエブリ・ダウン・プレーヤーだ。

 

ポイント:2018年week15のスティーラーズ戦を控えた状況での記者会見でのコメントです。「ケガで前週を欠場したエースRBのジェームズ・コナーが欠場するとしたら、その代役にはどんなプレーを予想するか」が試合の大きなポイントでした。ベリチックがその点どう考えてるかは大いに知りたいところですが、当然彼は答えません。サミュエルズの特徴についての客観的な説明をして済ませます。加えて、「同じことを2回言う」というテクニックを使えば、余計なことを言うのを回避できます。

 

決めゼリフ①「試合に勝つことがすべて」

Q: What's gone into the decision to keep Duke Dawson Jr. inactive after returning from injured reserve?

BB: We're trying to win games. Other than that, nothing.

引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 12/5

 

Q:インジュリーリザーブからロースターに戻したデューク・ドーソンを、インアクティブにして試合に出しませんでしたが、その決断の意図は?

ビル・べリチック:我々は試合に勝とうとしているだけだ。それ以外には、何もない。

 

ポイント:2018年week14前の記者会見。デューク・ドーソンは2巡目指名の新人CBで、week1の直前にインジュリーリザーブ入り。それをロースターに戻したのに、出場可能だった2試合でインアクティブ。ファンとしては期待して当然の2巡目新人であり、出場させなかった理由には興味が集まっていました。その意図を答えずに、何と返すか。決めゼリフ的に「勝とうとしているだけだ」と言うのです。決めゼリフを使うと、なんとなく話がまとまったように錯覚してしまうのがポイントです。 

 

決めゼリフ②“We'll see.”

Q: Do you hope to have Rob Gronkowski back this week?

BB: Yeah, we hope to get everybody back. We'll see.

 引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 12/24

Q:(week7欠場の)ロブ・グロンカウスキーはゲームに戻ってこられると望めそうですか?

ビル・ベリチック:ああ。すべてのプレーヤーの出場を望んでいる。期待しよう。

ポイント:上のコメントは、week8の前のものです。今まで紹介したテクニック(「当たり前のことを言う」 「総論で答える」)が見事に凝縮されています。さらに、決めゼリフの「 We'll see.」これはベリチックに限らず誰でも使うフレーズですが、「さあどうなるか、本番を待とう=それまではなにも答えない」を端的に表しています。

 

決めゼリフ③「彼らに聞いてくれ」 

Q: At what point could you tell that Matt Patricia would become a head coach?

BB: Yeah, look, those aren't my decisions. We have a lot of good coaches on our staff. I've had a lot of good coaches on my staff. What other organizations do is their decision, not mine, so I can't speak for them. I mean, you should ask that question to the people in the Lions organization.

 引用元:Transcript: Bill Belichick Press Conference 9/19

 

Q:マット・パトリシアが(ライオンズの)ヘッドコーチになると、どの時点でわかりましたか?

ビル・ベリチック:ああ、それは、私の決定ではない。我々には多くの優秀なコーチが今もいるし、それはこれまでもそうだった。他のチームが下した決定は、私のものではない。私から話すことはできない。その質問はライオンズの関係者に聞いたらいい。

 

 ポイント:こちらは、2018年week3の、ライオンズ戦を前にした記者会見より。前年までペイトリオッツのDCを務めていたマット・パトリシアが、ライオンズのヘッドコーチに就任した経緯についてコメントを求められたものですが、「私の下した判断ではない」「だから私は話せない」「それは彼らに(当事者に)聞いてくれ」の三段論法。かなり汎用性の高いテクニックです。

 

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まとめ

以上のように、ビル・ベリチックはあらゆるテクニックを駆使して「なにも話さない」ということを徹底していることが分かりました(僕の主観的な決めつけです)。ファンである僕としては、「勝つためにできること、相手の嫌がることは全部やる」というスタイルでのアプローチは、アメフトや対戦相手へのリスペクトの表れだと思うので、NFLの面白さの一つかな、と思って紹介しました。 よかったら、注目してみてください!

 

(ペイトリオッツ球団公式サイトの、「Transcripts」の項のリンクを貼っておきます。直近の会見の記事は、下記ページで見られるはずです↓)

https://www.patriots.com/news/transcripts

 

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