英語に触れるNFL民には、「5割~6割」の「なんとなく分かる」という状態の英文を、「8割~9割」の「ほぼ分かる」というところまで引き上げたいという人が多いはず。
そのためには「英文法の復習」が効果的です。英文法の参考書で説明されることを、NFLの例文で理解し直そう、という主旨のシリーズです。<①はこちら>
今回のテーマは「使役」。その中でも、「make」と「let」を取り上げます。さっそく見ていきましょう。
(もくじ)
<※参考図書>
(↑Amazonのリンクです。この本を見ながら解説の部分を書いています。代表的な英文法参考書です。ぜひチェックしてみてください)
<以下の記事中で、書籍やネット上の記事からの引用したものは文末に脚注として引用元を示しました。引用元がないものは、辞書やネット上の記事などを参考に当ブログで作成した文です>
文型と代表的な例文
make
意味:「(無理にでも、強制的に)~させる」
文型:主語 + make + 目的語(人物) + 動詞の原形
例文:They made me repeat the wole story. (彼らは私にその話を全部繰り返させた)*1
let
意味:「(相手がしたがっていることを)~させてやる」
文型:主語 + let + 目的語(人物) + 動詞の原形
例文:Her parents won't let her go out with her boyfriend.(彼女の両親は、彼女にボーイフレンドとデートをさせてくれない)*2
NFL民的ポイント
そもそも「使役動詞」の存在理由を好きになると、理解が早くなる気がします。英語の例文を見る前に、日本語で例文を作ってみます。
例文①「激しいパスラッシュが、相手QBに不正確なパスを投げさせた」
例文②「セカンダリーの混乱が、相手WRをオープンにさせた」
これを、英文法っぽく分解すると、
例文①「厳しいパスラッシュが(主語) + 相手QBに(目的語) + 不正確なパスを投げ (目的語の動作) + させた(動作の強制を示す使役動詞=make)」
例文②「セカンダリーの混乱が(主語) + 相手WRを(目的語) + オープンに(目的語の動作) + させた(許可を示す使役動詞=let)」
となります。この2つのいかにもアメフトで出てきそうな例文で、「使役動詞の存在意義」がイメージしやすくなるのではないでしょうか。
いずれも、動作の主体(例文①では「パスラッシュ」、例文②では「混乱」)が目的語の人物(例文①ではQB、例文②ではWR)に影響を与えて、その結果目的語の人物がある動作をした、という「因果関係」を示しているのです。その因果関係を端的に示せる便利な動詞として、「make」や「let」がある、と捉えるといいでしょう。
さて説明はこれで終わりです。ざっくり理解したところで、例文をたくさん見ていきましょう。
NFL民的例文
makeの例文
It just makes me want to work that much harder. *3(それのおかげで、僕はより一層頑張りたくなる)
※ペイトリオッツに2巡目で指名されたジョワーン・ウィリアムズ。指名順位の高さに、チームからの信頼を感じてのコメント。
His agility makes defenders look foolish.(彼の俊敏さは、ディフェンダーを無能に見せる)
The win made us forget all our exhaustion.(その勝利によって、僕らの疲れは吹っ飛んだ)
Did you see anything from Vrabel when he was here that made you think he'd one day be a good coach? *4(ブレイベルは、かつてあなたの元でプレーしていましたが、彼が将来いいコーチになると考えたことは当時ありましたか?)
※2018年week10、ペイトリオッツ対タイタンズの対戦前の記者会見で、ベリチックが受けた質問。タイタンズHCのマイク・ブレイベルがベリチックの元でプレーしていたことを踏まえて、「anything from Vrabel when he was here(彼がここにいた時の何か)」が、「 made you think(あなたに考えさせた)」という構造です。
Michel and James White combined for 224 yards from scrimmage on 41 touches as the engine that made Tom Brady's offense go. *5(ミシェルとジェームズ・ホワイトはあわせて41回のタッチで224ヤードをスクリメージから獲得。その貢献が原動力となり、トム・ブレイディのオフェンスを進めた)
※「Michel and James White combined for 224 yards from scrimmage on 41 touches as the engine」までが長い主語で、それをthatでまとめているような構造です)
Our blitz made him make a mistake.(我々のブリッツが、彼にミスをさせた)
※余談:翻訳のコツとしては「我々のブリッツによって、彼はミスをした」など、動作を起こす目的語の人物を主語にした方が自然な日本語になりやすい、とよく言われます。ただし、この記事では、なるべく英語の構造に近い訳文を作っています。
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letの例文
NFL teams just don't let young mid-tier starting quarterbacks walk away.*6 (NFLのチームは、若くてリーグ平均レベルのQBを手放すことなどしないものだ)
If the Rams don’t give it to him this offseason, they’ll be forced to give him the franchise tag or let him walk, where another team will jump at the chance to fork over a huge deal. *7
(今オフで、もしラムズが彼の望む契約を提示できなければ、フランチャイズタグを行使せざるを得ない。さもなければ、高額な契約をオファーするどこかのチームに、彼を出て行かせることになる)
※ラムズが2018年シーズン開始前に、アーロン・ドナルドと契約延長をまとめる前の記事に出ていた文章です。「let him walk」で、「歩いて出て行くことを許す」「チームを去るのを止められない」という意味で使っています。
Cardinals did everything they possibly could to let the Bears hang around and win Sunday.*8
(日曜のゲームで、カーディナルスは、出来うる限りのすべてのことをして、ベアーズにリードを許し、勝ちを譲った)
※2018年week3、カーディナルスがベアーズに敗れた試合を伝える文章です。「everything they possibly could」は、「ターンオーバーやペナルティなど試合で負けるためのあらゆること」を言っており、ベアーズに「hang around(ブラブラ歩くこと→ダラダラとリードしている感じでしょうか) and win」を許してしまった、という構造です。こういう言い方をするのは、「ベアーズがカーディナルスを圧倒した」のではなく、「カーディナルスの自滅で、結果的にベアーズが勝った」ことを伝えたいニュアンスが感じ取れます。
If you don't want him to celebrate, don't let him score. (奴にセレブレーションさせたくないなら、奴に得点をさせるな)
The league imposes more rules on defense to let offense score more. (リーグはディフェンスに対してもっとルールを増やして、オフェンスにより多くの得点をさせている)
おまけ① 使役動詞の「have」
英文法書では、「make」、「let」と一緒に「have」も出てくるので、あわせて例文を紹介しておきます。
I have my son clean up his room.(私は息子の部屋を本人に片づけさせた)*9
意味としては、「(当然してもらえることを)してもらうようにもっていく」と「実践ロイヤル英文法」では説明しています。「have」はしばしば、「make(強制)」と「let(許可)」の中間的な意味、と説明されます。(この記事では、ニュアンスの明快な「make」と「let」を取り上げました)
おまけ② 英語は語順が重要
(主語)+ make/let +(目的語の人物)+(目的語の動作を、動詞の原形で)
記事の最初に、構文を紹介しました。この語順は、「カタチ」として覚えるしかありません。
因果関係のある事柄、を示すために「主語」と「目的語」と登場人物が2人登場し、主語の動作としての「使役動詞」、目的語の動作としての「動詞の原形」があるので、同じ語順を守らないと、せっかく便利なはずの使役動詞の文が、わかりにくくなってしまうからです。
英語は、「主語を省略しない」と言いますが、「主語を省略してしまうと、文型が分からなくなってしまう」と捉えると、理解しやすい気がします。
目的語も同様で、「We'll make it happen」と言った時、(文脈上明らかだから「it」としか言わなかったとしても)このitを省略してしまうと、文のカタチが見えなくなってしまう。そんなイメージを持つと、リスニングの時でも、「makeの後に目的語がくるはず」と思えて、聞き取りやすくなってくるはずです。
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おわりに
今回はここまでとします。「英文法」ってちょっと面白いかも、と思えるようなきっかけになったらうれしいです。
英文法書が面白くないのは、「文法用語を理解するのが面倒」「結局どこにポイントがあるのかわからない」というような理由がある気がします。NFLの例文を使ったこの記事で英文法的な用語や考え方に慣れてから、英文法の参考書を手に取ってみることをおすすめします。
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引用元
*1、2、9 「表現のための実践ロイヤル英文法」(旺文社 綿貫陽、マーク・ピーターセン共著)
*3 https://www.patriots.com/news/transcript-patriots-wr-n-keal-harry-conference-call
*4 https://www.patriots.com/news/transcript-bill-belichick-press-conference-11-7
*5 http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000968150/article/what-we-learned-from-sundays-week-4-games