鯖缶NFL三昧

NFL(アメフト)ファンの個人ブログです。

NFL観戦日記2022⑰(まだ中学生気分が抜けてない)

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10月14日(金) もうweek6なのかよ

もうweek6なのかよ、と驚きつつコマンダーズ対ベアーズのサーズデーナイトをダラダラと観戦。僕がダラダラと見てたからかもしれないんだけど、両チームとも勝負に淡泊なように見えた。失敗すること、届かないことに慣れてしまってる雰囲気があるというか。


同じロースコアの試合でも、先週のサーズデーナイト(コルツ対ブロンコス)の方が楽しめた。どう違ったのかよく分からなくて、ちょっと考えてる。僅差の試合だったことは間違いないんだけどな。もっとアメフトを具体的に理解できると、その違いを言語化できると思うんだけど。

 

10月15日(土) まだ中学生気分が抜けてない

息子を将棋教室に連れて行って、待っている間はカフェで読書。村上春樹の「Firefly」(日本語原題は「螢」。のちに「ノルウェイの森」の下敷きになった短編)。英語を読むスピードを安定させる速読の練習のつもりで読んでるんだけど、大学生の頃の恋愛を思い出したりして、ペースを安定させるのが難しかったな。「いやあ、オレってキモいなあ」みたいなフレーバーと一緒にコーヒー飲んで、味わい深かったな。


英語力が足りてなくて、最後のホタルの描写がちょっとよく分からなくて。またいつか読むのか、それとももう一生で今回が最後なのかも。いや、たぶん一生で最後だよね。そう思うと、「ちょっとよく分からなかった」で済ませるのは申し訳ないな。でも、たいていのことは一生で最後なんだ。しょうがない。トイレに行ってフェイクパントを見逃すのが人生なんすよ。切ないですね。


息子と帰宅して、吹奏楽部の土曜練習に行っていた娘も帰ってきて、ここまではいつもどおりの土曜日。だけど、この後がいつもどおりじゃない。家族旅行で、ロックフェスに行くのである。「LIVE AZUMA」。今年が初開催のフェスらしい。僕らは日曜に参戦するために、土曜のうちに福島まで移動しなくてはいけない。


13時に出発。グーグルマップによれば所要時間は4時間ぐらい。安全運転で、休憩も真面目に入れるから5時間ぐらいかな。順調に高速乗って、川口ジャンクションで東北道に入って、ナビの音声が「246キロ道なりです」って伝えてきた。その時はそんなものかと思ったけど、246キロって、めちゃくちゃ遠いな。全然福島県にたどり着かないし、ようやく福島県に入ってもそこから先が長すぎる。


数か月前に、妻から福島でフェスがある、と聞いた時は「車で日帰りできるでしょ」「だって、取手とかつくばとかは東京の通勤圏内だし、茨城って実質東京でしょ。つまり、茨城の隣の福島も実質首都圏」とか話して、軽く考えてた。もちろん、そんなわけはなくて。福島県の南端だったらともかく、どちらかというと北端だった。実質山形じゃないか。山形ってことは、実質秋田だし、それってもう白神山地でしょ(違う)。最果ての地じゃないか。遠すぎるよ(出発の2週間にようやく調べて、日帰りを諦めて宿を取った)。


高速道路で、長時間運転してると現実感が薄くなる。時速80キロで走ってるのか、時速100キロで走ってるのか、メーターを見ないと見分けがつかない。さっきパーキングエリアを出てから30分は過ぎた気もするし、まだ5分しか過ぎてない気もする。仮想現実の中にいるみたい。


運転しながら、おなかがすくみたいに、喉が渇くみたいに、少しずつ心細くなってしまった。本当に、僕は家族を連れて、予約したユースホステルにたどり着けるんだろうか。「あと1時間ぐらい」「残り80キロぐらい」と、グーグルマップのナビゲーションどおりに進んでることも確かめてるんだけど、それでも、今自分がどこにいるのか、ちゃんとした実感を持って腑に落ちてないからだ。


中学生が好きそうなテーマだな。「世界は5秒前にスタートしたばかりだけどそのことに僕は気づいてない」とか「妻は精巧に作られたアンドロイドで、僕の気づかない間に入れ替わってるけどそれを証明できない」とか「僕は20年前に死んでいて、20年続く夢を一瞬の間に見てるだけ」とかそういうやつ。それに似た感覚。


この、「中学生みたいな不安」に、思わず苦笑してしまう。車の運転は、いつでも人生のメタファーだ。僕は、スマホの指示を正しいと盲信して(だって、正しいと信じるしかしょうがないじゃないか)、親の車を使わせてもらって(自分で点検をしたこともない)、ネットで調べた目的地(たぶん実在するんだろうけど、実際に着くまでは確かめられない)に向かってる。家族がいて、45歳にもなって、まだ中学生気分が抜けてないのかよ。自分が人生の行き先を決めて、ハンドルを握ってる実感がないなんて、甘えが過ぎるな。


「不安な気持ち」だって別に実体があるわけじゃないから、少しのきっかけですぐに忘れてしまうような程度のことなんだけど、渋滞のない快適なドライブのせいで、「仮想現実感」が抜けなくて困ったな。高速を下りる少し前に日が暮れて、心細さが加速した。「本当に道が合ってるのか」「あと20分で本当にたどり着けるのか」という不安を打ち消すような何かを自分が持ってなくて、ちょっと泣きそうになる(いろんなことを安易に人生に重ねない方がいい)。


NFLの観戦を続ける「現実感のなさ」も、この不安にちょっと似てるんだよな。なんでか知らないけどペイトリオッツを応援すると決めて、過剰に感情移入してシーズンの行方を追い続ける。この世のどこかで実際にやってることなんだろうけど、それを確かめられなくて。


もちろん、宿はグーグルマップのとおりに実在したし、到着予測時刻もぴったりだったんだけど。コンビニで買ったカップラーメンの夕食、ごちそうだよ。だって、宿に着いた安心感がものすごい。宿の周囲には本当に何もない場所で。家族でちょっと散歩して、星もたくさん見られた。星って怖いよな。数が多すぎる。夜って怖いよな。静かすぎる。でも、車の中で感じた仮想現実感に比べたら、こっちの怖さの方が好きだな。まあそれも、隣に家族がいて、泊まる場所が確保できてるから言えることなんだろうけど。

 

10月16日(日) 骨に刻み込まれているもの

さて、いよいよ「LIVE AZUMA」に乗り込むんである。妻の目当てはトリのユニコーンで、出番は19時から。あんまり早く行ってしまうと、子どもたちが途中で飽きてしまうかもしれない。まあでも、こうなったらしょうがない。わざわざ前日に宿を取ったんだ。朝から行くよ(駐車場に止めるのと、駐車場から歩くので時間がかかって、結局1組目のyonigeの途中からだったけど)。


ライブの会場は、公園内にある野球場で。曇り空の午前中、ちょっと物憂げなグルーヴの曲を聴きながら、一番後ろから座って見て。(おそらく)熱心なファンが最前列にいて、最後列の(あまり熱心ではない)僕らまでのテンションのグラデーション。昼の野外だから、ちょっと盛り上がりが散らばってしまいそうなんだけど、その分オーディエンスがパフォーマーを応援してるような感じになって、これはこれでいい雰囲気だな、と思った。誰かが誰かを応援してるのを見るのが好きなんだ。全員が熱狂的な応援だと怖いから、ちょっと通りすがりの人(僕らのような)が混ざるぐらいがちょうどいいよ。


子どもたちも「フェスってこんな感じなのか」となんとなく分かって、ちょっとリラックスした感じ。僕も、会場まで家族を連れてこられたことを実感して、ようやく油断できる時間を味わった。もし家族の誰かが発熱したら断念しただろうから、この数週間は緊張してたんだ。自分が緊張してたことは、リラックスしてはじめて気づけるもので。


一番好きだったのは、ウルフルズのトータス松本さん。全身の骨という骨のすべてに、「サービス精神」が刻み込まれているような人だ。武術の達人がそこに立っているだけで静かな殺気を放つように、トータスさんは、ステージに出てきただけで温かいエネルギーを感じさせる。リラックスしてるのに、一挙手一投足から、静かな喜びがにじみ出ていた。そんな彼が、もったいぶらずに、ヒット曲を順番に披露していく。「ガッツだぜ」「バンザイ」「笑えれば」「それが答えだ」って、その、シンプルなメロディーの、シンプルな歌詞の、シンプルなメッセージに、どれほどの説得力が込められていたことか。目が潤んだな。


屋外の会場だけどマスク着用、声出しはNGの決まり。ほとんどのオーディエンスは素直に従っていて、でも「ちょっと声が漏れてしまうのは仕方ない」みたいな自然な雰囲気。「我慢してきたロックフェスが、ようやくできるようになってきた」「でも、感染対策のルールは必要らしい。以前と同じとはいかないのか。もどかしいよ」という気持ちが混ざりあったような会場の雰囲気で、トータスさんは「声を出していいよ」とも「声を出さないで」とも言わずに、そのもどかしい気持ちをそのまま抱きしめて、肯定するようなオーラでパフォーマンスしてくれた。来てよかった、と思った。


その後午後になって日が出てきて、上着を脱いで。大変恥ずかしながら、夫婦お揃いでユニコーンのTシャツを着てたんだけど。何と言うか、さらに恥ずかしいことに、すでにフェスの雰囲気にのまれてるので、恥ずかしいことも含めてちょっとうれしいんである。


Dragon Ashを客席の一番後ろで見て、その後が東京スカパラダイスオーケストラ。ここから、なるべく前の方に行ってみることにした。子どもたちが前の方で見るのが怖かったりするなら、僕と子どもは後ろに残って、妻だけ前に行ってもらおうかと思ってたんだけど、子どもも前の方に行きたい、という。おお、そうか。


スカパラさん、ありがとう。子どもたちも大喜びだったよ。そしてユニコーン。昔のヒット曲をやるのに「照れ」があるのがかわいかったな(再結成後の曲中心のセットリスト)。まだ中学生気分が抜けてないのも、素敵だと思うよ。


途中で車に戻って仮眠を取ろうかとも思ってたんだけど、結局一日中楽しんでしまった。ここからまた300キロ運転して帰るのか。でも妻よ、子どもたちよ、心配しないでくれ。僕は毎週NFLをトリプルヘッダーで見て鍛えてるからね。眠気には強い(結局、駐車場出る前に15分仮眠したし、高速でも2回休憩挟みました。マジメかよ)。


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