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【NFLスーパーボウル55プレビュー】ブレイディ対マホームズが伝説必至な件

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NFL2020シーズンは残すところスーパーボウルの1試合のみとなりました。AFC代表のカンザスシティ・チーフスとNFC代表のタンパベイ・バッカニアーズが対戦します。


バッカニアーズのQBトム・ブレイディ、チーフスのQBパトリック・マホームズの魅力を中心に、見どころをまとめました。スーパーボウル観戦がますます楽しみになったらうれしいです。

 

両カンファレンスの勝者が決まったあと、僕は思わずこうツイートしました。

 


将棋界の至宝2人を例に出して、「生きるレジェンド=ブレイディ」対「それを上回る器かもしれない若者=マホームズ」を伝えたものです。


ツイッターの文字制限では書ききれなかったこの対戦の魅力を、まとめていきます。


(もくじ)

 

 

トム・ブレイディの魅力


トム・ブレイディという選手のすごさを語る時に、「スーパーボウルに過去9回出場し6回制覇。4度のスーパーボウルMVP」という実績を挙げるのは安直かもしれませんが、やはり、この残してきた結果こそが、もっとも雄弁に彼を語るような気がします。


6回の優勝というのはものすごい。つまり、それまでの勝利に満足せずに、次の勝利を求めたからこその実績です。

 

2007シーズンと2011シーズンにスーパーボウルで敗退し、自身4つ目のリングを手にしたのは2014シーズン。僕は当時、シーホークスを倒したこのスーパーボウルが、ブレイディの素晴らしいキャリアのフィナーレなのかな、と思いました。


「ブレイディ物語(前後編)」があるとしたら、後編のエンディングに見えたこの勝利は、「ブレイディ物語(上中下巻)」、下巻のオープニングでした。彼は、2016シーズンに5度目、2018シーズンに6度目のスーパーボウル制覇を果たします。


そして、そこでストーリーは完結しません。2019シーズンが終わると、ヘッドコーチ、ビル・ベリチックとともに栄華を築き上げたペイトリオッツを退団し、新天地で挑戦を続けることを選んだのです。


その間、ずっと彼は「勝ちたい」と思い続けていたということです。4度目でも5度目でも6度目でも満足しなかった。誰よりも勝利に恵まれたブレイディが、誰よりも貪欲に次の勝利を求め続けた。


彼にとって「勝利への意欲」は、「喉が渇いたら水を飲みたくなる」というような、当たり前のものなのかもしれません。呼吸や、心臓の鼓動と同じように、勝利を求め続けたんじゃないか、とすら思えるほどです。


彼がQBとしてどの部分が優れているのか。NFLの試合中継で出てきた紹介映像で、「4つのA」が紹介されていたのをよく覚えています。

awareness:アウェアネス(危険察知能力)
audible:オーディブル(守備陣形を見てコール変更) 
adjustment:アジャストメント(試合中にプランの調整)
accuracy:アキュラシー(パスの正確さ)


この点は、単なる語呂合わせではなく、クオーターバックとして重要な資質でブレイディの強みをよく言い表していると思います。


しかし、彼にとっての最大の強みは、「大舞台の最終局面でも揺るがない鉄のメンタル」ではないでしょうか。


2014シーズンのスーパーボウル49、2010年台最強の守備と言ってもいいシーホークスを相手に、第4Qで10点ビハインドからの逆転劇を演じました。この試合の2週間前には、「デフレートゲート」という不正疑惑のスキャンダルが持ち上がったばかりです。並の心臓の持ち主なら、まともなプレーができる状態ではありません。


しかも、この試合でブレイディは2つインターセプトを喫しています。ズルズルとプレーが乱れていってもおかしくない状況で、まさに「トドメを刺される寸前」まで追い込まれてから、最強守備を相手に2ドライブ連続でタッチダウンを挙げる、文句なしのクオーターバッキングを披露したのです。


その2年後のスーパーボウル51ではファルコンズを相手に3Q半ばで25点差つけられた状況から延長戦に持ち込み、ついには逆転勝利を収めました。


この延長戦での決勝タッチダウンが決まってからのブレイディの姿が忘れられません。スナップを受けたブレイディが、右側にトス。ボールを受けたRBジェームズ・ホワイトがゴールラインに倒れこむようにタッチダウン。審判がタッチダウンのシグナルを出すと、ブロックの役目を果たしたWRマルコム・ミッチェルは喜びを爆発させベンチに向かって走り出し、それと入れ替わるようにサイドラインにいたRBルギャレット・ブラントはエンドゾーンのホワイトに抱きつきに行く。紙吹雪が舞い、両軍のコーチや撮影クルーがブレイディを取り囲む…


その時のブレイディの態度が最高でした。彼だけは、まだ油断していなかったのです。ビデオの確認(NFLはすべての得点を審判がレビューします)が済み、タッチダウンが正式に認められるまでは、次のプレーのために集中を切らしてはいけないと、思っていたのでしょう。


最高の舞台で、最高の逆転劇を果たしてもなお、興奮に飲まれようとしない、「プロの暗殺者」のようなメンタリティ。すさまじいものを見た、と思いました。


パトリック・マホームズの魅力

 

チーフスQB、パトリック・マホームズの豆知識として、「父、パット・マホームズは野球の投手(メジャーリーガー)。かつて横浜ベイスターズでもプレーした」というものがあります。


僕は野球はほとんど知りませんし、日本のプロ野球に詳しい人でもそれほど覚えている人は多くない単なるトリビアですが、QBパトリック・マホームズのプレーは、「野球の遊撃手のような身のこなし」と言うと伝わりやすいかもしれません。


体勢が崩れていても、重心が流れていても、ボディ・バランスと肩の強さでスローが乱れないアクロバティックなショートストップのイメージ(※マホームズは実際にカレッジで野球もプレーしていて、ポジションはショートでなくピッチャーだったようです)。


マホームズがNFLファンに一躍名を挙げたプレーがあります。彼のプロ入り2年目、先発QB昇格1年目の2018シーズン、week4のブロンコス戦でした。

 

3点ビハインドの4Q、最終盤で、オールプロのエッジラッシャー、ボン・ミラーに捕まりかけたマホームズ。ボールを左手に持ち替えて、倒れながらもパスをタイリーク・ヒルに通したのです。この後、攻撃をTDまで導いて、チーフスは逆転勝利を収めます。


(動画のリンクを貼っておきます。Youtubeで見る、をタップしてYoutubeに飛べば見られるはずです↓)

www.youtube.com


この「左手投げ」は、マホームズを象徴するプレーとなりました。「重要な場面で」「相手守備が"捕まえた"と思った瞬間に」「思いもよらないプレーを」「落ち着いて決める」。


オフシーズンに出たNFL100(記者やファンでなく、選手同士の投票で決める「すごい選手ランキング」)のコメントでは、タイラー・ルワンが「コーチが“やるな”と言うようなプレーを、決めるんだ」と舌を巻いているほどです。

 

(当ブログでも詳しく紹介しています↓)

【2019 NFL TOP100コメント紹介】4位パトリック・マホームズ - 鯖缶NFL三昧

 

しかし、真に驚くべきは「ミスの少なさ」にあるのかもしれません。「身体能力に任せた派手なプレー」は、苦し紛れに、イチかバチかで出したものではなく、あくまで冷静さを失わずに成算があって試みたプレーばかりです。2020シーズンの被インターセプトはわずかに「6」。2019シーズンは「5」でした。


そして、マホームズは大舞台でのメンタルの強さも証明済みです。2019シーズンのプレーオフでは、「2ケタ以上の点差からの逆転劇」を3試合連続で決めて、スーパーボウルを制覇しました。


プレーオフでの唯一の敗戦は2018シーズンのAFCチャンピオンシップ(相手はブレイディ擁するペイトリオッツでした)。延長戦になり、コイントスで勝ったペイトリオッツが最初のボール保持でタッチダウンを決め、マホームズは延長戦でボールを触れないまま敗退しました。つまり、彼のプレーオフでの唯一の敗因は「コイントス」なのです。


どうでしょうか。ブレイディの「大舞台での勝負強さ」を上回るプレーヤーがいるとしたら、それはマホームズに他なりません。


カンザスシティ・チーフスの魅力

 

チーフスオフェンスの強さは「相手ディフェンスに与える絶望感」にあるのではないでしょうか。


タイトエンド、トラビス・ケルシーは「ミスマッチ・ナイトメア」。パワーで負けないディフェンダーが守ればスピードで負け、スピードで勝負すればパワーで負ける、という存在。


ワイドレシーバー、タイリーク・ヒルも1対1では守れません。単純な最高速度だけでなく、動く、止まる、方向転換する、というクイックネスも合わせ持ち、ディープでもアンダーニースでもどこでも活躍できます。


「1対1でのカバーが無理ゲー」な選手が2人いるだけでなく、その相性も抜群です。ヒルを守ろうと深めを厚くすればケルシーが空いたゾーンに走り込み、ケルシーに密集すればヒルがビッグプレーを決める。しかも、QBマホームズ自身が動いて時間を稼げる選手で、動いても冷静さやパスの正確さを損ないません。


「普通だったらディフェンスが勝ち」という状況からファーストダウンを更新したり、「普通だったら5ヤード前後のゲイン」というプレーが30ヤードのビッグゲインになったり、チーフスのオフェンスは「相手の心を折るオフェンス」だと思います。


その上、チーフスには「趣向を凝らしたガジェットプレー」があります。昨季はスーパーボウルでも4人の選手がダンスの振り付けのようにスピンする「おもしろプレー」を見せました、そんなプレーが、大事な場面で「鼻歌交じり」のように簡単に決まるのです。


ヘッドコーチのアンディ・リードは研究熱心な戦術家として、以前から定評がありました。その反面、プレーオフでは勝ち進めずに、「クロック・マネジメントが苦手で、勝ちきれない」というイメージも払拭できずにいました。

 

そんな彼が、マホームズという最高の駒を得てさらに戦術に冴えを見せ、マホームズの勝負強さが乗り移ったように、「有利な試合を勝ちきる」「シーズンを最後まで見据えて戦う」「混戦をモノにする」と、勝負師としての強さを手にしたのが今のチーフスでしょう。


「分かってても止められない選手たちの組み合わせ」×「何をやってくるか分からない戦術」で2連覇を狙います。

 

タンパベイ・バッカニアーズの魅力

 さて、チーフスオフェンスのアンストッパブルぶりを伝えてきましたが、バッカニアーズディフェンスに勝ち目はないのでしょうか。僕は、十分勝機はあると思います。


バッカニアーズは第5シードでプレーオフに残りました。そこからアウェーで3連勝。特に、セインツ戦、パッカーズ戦という「本命相手への勝利」にはディフェンスが大きく貢献しました。シーズンのもっとも重要な局面で、ディフェンス全体が噛み合ってきた印象です。若手とベテランがバランスよく活躍しています。


オールプロ、2ndチームのLBデビン・ホワイト(2年目)、チャンピオンシップで戻ってきたDTビータ・ベア(3年目)、プレーオフ3試合で3連続インターセプトのCBショーン・マーフィ・バンティング(2年目)。


レギュラーシーズンのチーフス戦でヒルのマークを任されるも屈辱的にやられまくったCBカールトン・デービス(3年目)も、セインツ戦、パッカーズ戦で役目を果たし、雪辱を誓っているところでしょう。


それらの若手に加えて、チーム生え抜きのベテランLBラボンテ・デービッド(オールプロ、2ndチーム。キャリア9年目)、DEウィリアム・ゴールストン(8年目)らが健在です。


バッカニアーズは13年ぶりのプレーオフ進出のため、プレーオフの経験値が足りないように思えますが、実はそんなことはありません。OLBのジェイソン・ピエール・ポールはジャイアンツ時代に、OLBシャキール・バレットはブロンコス時代にそれぞれスーパーボウル制覇、DTエンダムカン・スーはラムズ時代にスーパーボウル出場の経験があります。


こう見ると、好調な若手、チーム生え抜きのベテラン、スーパーボウル経験のある加入組のベテランと、ものすごくバランスのいいユニットに感じます。プレーオフでも調子を上げてきたこのディフェンスが、レギュラーシーズンではやられたチーフスのオフェンスに再挑戦するわけです。


1試合通じての完封は難しいでしょうが、勝負どころでターンオーバーを奪ったり、レッドゾーンでタッチダウンを許さずに死守する可能性は十分にあると思います。


そして、バッカニアーズのオフェンス。オフェンスラインはPFFがレギュラーシーズン終了時に出したランキングで32チーム中5位でした。WR、TE、RBとスキルポジションにも有名選手が揃う文句のない陣容です。


ですが、バッカニアーズオフェンスの最大の魅力は、「まだ発展途上」にあることではないでしょうか。


プレーオフに入り、ワシントン戦ではゴッドウィンがいくつものドロップをし(それまでのキャリアでのドロップ数に並ぶ4回の落球を1試合で記録)、セインツ戦では試合開始から2ドライブ連続でスリー&アウト。ディフェンスにお膳立てしてもらって得点しました。パッカーズ戦ではブレイディが3インターセプトを喫しています。


「オフェンスラインの強さ」「レシーバー陣の能力」「ブレイディの勝負強さ」が、完璧に噛み合った最大出力の試合は、まだ見せていないように思うのです。


僕はこのことはスーパーボウルの戦前予想としては「ポジティブ要素」と捉えます。


ブレイディは今季からチームに加入しました。OTA(シーズン前のキャンプ)、プレシーズンマッチがキャンセルされ、レギュラーシーズンの本番の試合で連携を深めるしかない状況だったことを思えば、「加入1年目でスーパーボウル進出」は間違いなく偉業でしょう。


シーズンの序盤には、特にプレーが崩れたときにレシーバーとブレイディの意図が合わないシーンがよくありました。week5のベアーズ戦では、オフェンスラインと呼吸が合わずに、 フォルススタートを繰り返し自滅気味に敗れました。シーズン序盤で好調に見えたロングパスも、シーズン中盤では失速したように思います。


そんな、数々の停滞を調整して、機能させられるようになってきたのがバイ・ウィーク(week13)以降のバッカニアーズオフェンスだと思います。ペナルティの数は減り、重要な場面でQBスニークが安定して成功するなど、オフェンスラインとブレイディの呼吸は合うようになってきました。


参考↓

Tampa Bay Buccaneers - 2020 Penalties - View by Game/Week - NFL Penalty Stats Tracker - Data From 2009-2020


week16のライオンズ戦では、2Qに13点リードしてる状況で、それまでほとんどやらなかったノーハドルオフェンスを試みました。ディビジョナルのセインツ戦では、慎重に守られたディープよりも、浅めのパスでTEブレイト、RBフォーネットを積極的に使いました。


バッカニアーズの強みだったエバンスらの能力、エリアンズHCの「No risk it, no buscuit(リスクなくしてビスケットなし)」というアグレッシブさと、ブレイディの真骨頂である「効率のいいオフェンス」を融合させる作業をずっと行ってきたのが今季のバッカニアーズオフェンスであり、それはまだ「進行中」というのが僕の印象です。


まだオフェンスが100%の力を出せていない状況で、セインツ、パッカーズに勝てたのはディフェンスのターンオーバー奪取力によるものでした。チャンピオンシップからスーパーボウルまでの間の1週間のバイ・ウィークで、バッカニアーズオフェンスが「完成」に近づくことはあり得ないことではないと思います。


僕は、2020バックスオフェンスの「集大成」となるようなドライブが、見てみたいです。


ヘッドコーチのブルース・エリアンズは、現在68歳。カレッジでヘッドコーチになったのは1975年。1989年のチーフスでのRBコーチとして、NFLでのコーチキャリアがスタートしました。その後、2012年のコルツで暫定としてヘッドコーチになり、初めてヘッドコーチになれたのは2013年(60歳)のカーディナルスの指揮を執った時でした。


ポジションコーチ、オフェンスコーディネーターとしてはスティーラーズ時代にスーパーボウル制覇の経験はりますが、やはりヘッドコーチとして勝ちたいでしょう。がんのため、一時は引退しNFLを離れたエリアンズでしたが、2019年にバッカニアーズが彼を招いてチームを託します。彼の悲願は成就するでしょうか。


まとめ

再びトム・ブレイディ=羽生善治、パトリック・マホームズ=藤井聡太の例えに戻ります。2021年のこの時点で、タイトル戦の舞台で「羽生善治vs藤井聡太」の対決は実現していません。


もし、今後実現するとしたら、藤井さん(現在2冠)のタイトルに、羽生さん(現在無冠)が挑戦する形になるのではないでしょうか。想像すると、めまいがする思いがします。「タイトル経験合計99期、永世七冠のGOAT」が、「挑戦者」とは。


そんな、最高にハラハラするような対決が、スーパーボウル55で実現します。「昨季の王者、今季最高の成績のチーフス」が本命で、「プレーオフで調子を上げてきたバッカニアーズ」が挑戦者、という図式。バックスのホームスタジアムで、観客を入れて行われます(22000人のファンに加え7500人の医療関係者を招待)ので、追い風が挑戦者の側に吹くことも十分考えられます。


ブレイディがGOAT(greatest of all time、史上最高の選手)というのは、(ジョー・モンタナの4回を超えた)5回めの優勝の時に「認めるしかない」、6回目の優勝の時に「もはや議論不要」となった気がします。しかしそれでも、そんなブレイディのキャリアを、上回る選手がこの世にいるとしたら、それはマホームズでしょう。


もしこのスーパーボウルでブレイディが敗れれば、「ブレイディの輝かしいキャリアも、マホームズ伝説の引き立て役になってしまう」かもしれません。逆に、ブレイディが勝つのなら、「マホームズすら引き立て役」となるでしょう。それが真剣勝負のおそろしさ。おそらく両者とも「望むところだ」と思ってるんじゃないでしょうか。


さて、キックオフは(日本時間で)2月8日(月)の8:30。絶対に見逃せません。

 

 

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(これは2年前のものですが、マホームズの「すごさ」をNFLのスター選手たちが話しているのを紹介したもので、今読んでも面白いと思います↓)

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(ペイトリオッツ時代のブレイディの名試合を紹介しています↓)

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