「進撃の巨人」(諫山創)を読み直した。なるほど。流行したことがよく分かる。ものすごく面白い。巨人の怖さ、気味悪さと主人公たちの覚悟が伝わる導入、「調査兵団」の困難と活躍を描く中盤、世界の秘密を知り絶望に圧倒される終盤、その絶望がクレッシェンドで鳴り響くフィナーレ。最高じゃないですか。
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面白いものに出会うと、どうしてもNFLと比較してしまう。どこか、共通点はないか。それで、思ったことを以前ツイッターに流してみました。誰かに伝わるかもしれない、そんなことを思ってここにも残しておきます。
【謎理論:「進撃の巨人」は実質NFL】
— 鯖缶@NFL三昧 (@savacanNFL) October 8, 2021
マンガ「進撃の巨人」を1巻から読んでるんですけど。「絵が上手くない」ところが逆にいいところなんじゃないか。
・アクションがわからない(動きの速さや、力の加わってる方向とかが見えにくい)
・誰の、いつの回想なのかわかりにくい
が第一印象だった。
「複雑な裏設定が、物語が進行するにつれ明らかになる」っていう作品なのに、「そもそも流れを追うのに負荷がかかる」っていうハンデ。
— 鯖缶@NFL三昧 (@savacanNFL) October 8, 2021
それでも圧倒的に面白いのは、「巨人の怖さ、気持ち悪さ」と、「主人公たちの面構えが違うこと」だけはめちゃくちゃシンプルに伝わってくるからなんじゃないか。
「理解するのがめんどい世界」という不快感をベースに、「ヤバい敵とヤバい主人公」という快感が際立ちまくってる。「わかりにくさ」と「わかりやすさ」の2層構造。
— 鯖缶@NFL三昧 (@savacanNFL) October 8, 2021
こうなると「絵が上手くない」は弱点でもなんでもなくて、「クセになる味」「リピートしたくなる中毒性」になってしまう気がします。
それってNFLも似てませんか。
— 鯖缶@NFL三昧 (@savacanNFL) October 8, 2021
「登場人物多すぎ、フォーメーション多すぎ、移籍多すぎ、マニアックルール多すぎ」という「情報のめまい」がありながらも、「選手たちのカッコよさ」「勝敗の重み」「1プレーの重み」はめちゃくちゃシンプルに伝わってくる。
この2層構造が中毒性を呼ぶのでは、と。
蛇足かもしれませんが、もうちょっとまとめてみます。NFL(アメフト)は、「わかりにくい」けど「わかりやすい」。
「わかりにくい」のは、情報量が多すぎること。選手の数が多すぎる。ルールの数が多すぎる。「選手が多すぎる。オフェンスとディフェンスでそれぞれ交代するし、ダウンによって違う選手出たりするし、わからない」と僕も思います。
ですが、「要するにQBが主役なのね」と思ってしまえば、これほどわかりやすい話はありません。「QBだけまず注目する。そのQBが好きならオフェンス応援、嫌いならディフェンス応援。QBが持ってるボールを守れるか、奪えるか。そのストーリーを追うだけで面白い」と捉えればいい。
ルールについても同じです。「プレーを区切って時間を止める」、「4ダウン以内に10ヤード進めば攻撃続行」というアメフトのルールは、慣れないうちは少し戸惑います。しかも、プレーヤーの役割やフォーメーションに制約があるのも、覚えるのが大変。そう思うと、「わかりにくい」と言いたくもなります。
だけど、この面倒な制約は、要するに「勝負の見どころの可視化」だと思うとしっくり来る。10ヤード進むのに成功すればナイスプレー、失敗すればプレー失敗。しかも、1回ごとに止まってくれるので、「次はどんなプレーが来るのか」と期待する時間もできます。この、「わかりやすさ」を実現するために各ルールがあると思います。各チームや審判はルールを覚えるのが大変かもしれませんが、「見るスポーツ」としてのエンタメ性としては、「プレーの成功、失敗」がかなりダイレクトに伝わってくる気がします。
どうでしょうか。この「わかりやすさ」と「わかりにくさ」のバランス。「進撃の巨人」に似てませんか(似てたからって何なんだ、とは我ながら思います)。
「世界設定が複雑で情報整理が追いつかない」からこそ、「“今にもくじけそう”で、でも“絶対にくじけるわけにはいかない”」という主人公たちの気持ちにシンクロしてアツく読める感じ。NFLでも、「勝敗に関わりそうな要素が、チーム作り、作戦、選手状態、相性とか多すぎて、予想できない。展開が読めなくてヤバい」という状態で、「要するに次の試合に勝つか負けるかで運命が変わる」という事実だけが圧倒的にわかりやすくて、エキサイトしてしまう感じ。だいたい同じでしょう。
「新劇の巨人」のファンがNFLを見つけてくれることを祈っています。
(今回は以上です)
(過去に書いたコラムのリンクを貼っておきます。よかったらどうぞ↓)